
夜勤って体に悪いの・・・?

残念ながらシフトワークなどで生活リズムが乱れている人は、体調を崩しやすかったり病気になる可能性が高いようです。具体的には、生活習慣病やがん、うつ病などのリスクが高まるようです。
🔹日本のシフトワーカーの数は、平成 9 年 13.3%、平成 14年 17.8%、平成 19 年 17.9%、平成 24 年 21.8% と増加しています。特に医療機関で働く看護職員は、8時間以上の2交代制の夜勤勤務にあたるのは約40%(日本医療労働組合連合会、 2019年度夜勤実態調査 )と、大半が夜勤を含める長時間勤務に従事されています。


おかげで安全、安心して生活できています。ありがとうございます‼︎
🔹コロナウィルスによって医療従事者の方の夜勤労働がクローズアップされましたが、その他に農業、漁業、配送業、工場、介護施設、消防・救急、交通などなど私たちの快適な生活を24時間支えるために多くの方々が夜を徹して働いてくださっています。お陰で夜間に病気になっても救急医療を受けられたり、早朝におにぎりを買えたり…。













がしかし…
🔹一方で残念ながらそれらの方々がさまざまな健康リスクを背負ってしまうのは事実です。やりたい仕事は夜勤を含んでいたとか、厳しいからこそやりがい感じられるという方もいらっしゃるでしょう。

🔹もちろん選択は自由ですし、尊重されるべきものですが、そういうお仕事の方々は少しでも体に対する負担を減らすような努力をされることをぜひおすすめしたいと思います。
ちなみに、要ケアのシフトワーカーさんとは?
🔹いつも朝早く例えば午前4時には出勤するお仕事を続けているような方は、そのスケジュールが固定していてリズムが出来上がっていますが、
・数ヶ月ごと、もしくは数週間ごとにスケジュールが変わる
(1週間朝8時から、次の1週間は夜10時からの勤務・・・など)
・1週間の中で夜勤が2日以上ある
・完全に昼夜逆転の勤務を続けている

シフトの方は特におからだに気をつけてくださいね!
代謝の異常
脂っこい食べ物(脂質)やごはんなど炭水化物(糖質)をエネルギーに変える働き(代謝)が落ちてしまう。脂質や糖質の代謝異常 。
血液中の糖度(血糖値)を下げるインスリン(すい臓から分泌されるホルモン)が効きづらくなる。インスリン抵抗性の増加。
がんリスク
特に乳がんや前立腺がんなどのリスク高いらしいのです。
心臓疾患や脳卒中などの疾患
うつや不安症など気分障害といわれる精神的な不調


シフトワーカーにはどんなリスクがあるの?
などのシフトで働いている方々です。
寝ている時間と起きている時間が入れ替わり、一定しないような場合はから だのリズムが慣れてきた頃にまた逆転した生活になってしまうため、リズムが乱れたままになってしまうと考えられます。
などとの関連がみられることが複数の研究から明らかにされています。
中でもシフトワーカーさんにとって要注意なのが糖尿病。糖尿病(2型)は日本人に増加しているといわれています。この病に強い関連があるインスリン抵抗性とはどのようなものなのか、少し詳しくみてみましょう。
まずインスリンってどんなもの?
❷ 血液中のブドウ糖を感知するとすい臓のB細胞からインスリンが放出されます。
インスリンのはたらき❶ 食事を始め、食べ物が消化・分解されると血液中のブドウ糖が増えます。
❸ 放出されたインスリンは細胞膜の表面にはまり込み、さまざまな物質の助けを借りて細胞膜の表面が開いて細胞内にブドウ糖が入り込めるようにします。
❹ さまざまな物質とはプロティーンキナーゼ(直訳するとタンパク質酵素)という物質で、「リン酸化」という化学反応を続け、結果としてターゲットとするタンパク質を活性化し、ブドウ糖を細胞内に取り込むための穴を細胞表面に開かせます。

インスリンが出るまで…
インスリンはすい臓(膵臓)から分泌されるホルモン(ホルモン;臓器から分泌され、血液中に入り全身をめぐって特定の臓器(細胞)にはたらきかけ、作用を起させる物質)で、血液中の糖濃度を下げる働きがあります。食事をとってしばらくたつと炭水化物(ブドウ糖=グルコース、ブドウ糖に食物繊維がついたものを炭水化物といいます。)が消化吸収され、血液中にブドウ糖が送り込まれます。この状態は血液中のブドウ糖が多い状態で、「血糖値が上がる」といいます。その糖をそれぞれの細胞に取り込まれるようにするのが「インスリン」です。インスリンが分泌されて、ブドウ糖が筋肉や脳の細胞に吸収されはじめると自然に血液中の血糖値は下がっていきます。


ホルモン工場「すい臓」
※インスリン はすい臓から分泌されるホルモンの一種です。

↑インスリンが細胞の鍵穴(受容体)にはまると、細胞内にブドウ糖を取り込める穴がひらくしくみになっているんだって…すごい仕組みだな。


さまざまな物質のはたらき
インスリン くん細胞表面の鍵穴にハマる
GLUT4が細胞表面に糖を取り込むドアを開ける

インスリンくん
インスリンが細胞表面にはまり、糖が取り込まれるまで
❶. インスリンが細胞膜表面にあるインスリン受容体にはまると、チロシンキナーゼという酵素が自己リン酸化します。 ❷ チロシンキナーゼはインスリン受容体基質(IRS-1)という物質をリン酸化する。 ❸.IRS-1はPI3k(ホスファチジルイノシトール3キナーゼ)が結合する。このPI3Kがリン酸化してホスファチジルイノシトール3リン酸(PIP3)を生成、そのPIP3に3-ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ(PDK1)やセリン/スレオニンキナーゼ(Akt)[AktはプロティーンキナーゼB(PKB)ともいう]が結合し活性化させる。 ❹ PDK1はAktにも結合しリン酸化してAKtの活性も強める。 ❺ 活性化したAkt(PKB)は細胞膜を離れて移動し、グルコースを取り込むグルコース輸送体GLUT4という物質を活性化します。(トランスロケーション) ❻. GLUT4が細胞表面に移動し、細胞外のグルコースを取り込むための入り口を開け、骨格筋や脂肪細胞に血中のグルコースの取り込みを開始する。


何か食べるたびに細胞とか、ミクロの世界でこんな複雑なことが毎回おこっているわけ?ムリムリ…全然把握できない。
さまざまな物質のはたらき
🔹このように血中の糖度はインスリンによってコントロールされています。しかし、さまざまな理由からインスリンが分泌されても、血糖値が下がってくれない状態になります。これを「インスリン抵抗性」(インスリンが効かなくなること)といいます。インスリン抵抗性が高くなると、血液中の糖度が高いままということになります。
🔹メカニズムはよくわかっていませんが、睡眠と日中活動の不規則な生活が、概日リズムを乱し、結果としてインスリンの分泌自体が減少してしまったり、インスリン抵抗性をあげてしまうのではないか、と考えられています。
🔹インスリンの分泌減少やインスリン抵抗性がどうして2型糖尿病などに関わってくるかは こちら→ 糖尿病



え?ガンも?
🔹世界保健機構(WHO)の外部団体で、国際的ながんの研究機関であるIARCという組織は2007年にシフトワークを「おそらく発がん性のある」という、クラス2のAクラスに分類しています。(「発がん性がある」はクラス1に分類。クラス2は二つに分割されて、Aが「おそらく発がん性のある」、Bが「発がん性がある可能性がある」)。現在も分類に変更はありません。
🔹これまでの研究からは、乳がん、前立腺がん、大腸がんなどとの関連が確認されているようです。メカニズムは明らかになっていないものの、概日リズムの恒常的な乱れが大きな要因になっているのではないか、といわれています。
🔹他に、心疾患や高血圧との関連、また流産や早産、低体重児との関連、うつや不安症など精神的不調との関連を示す結果もあります。
狭心症(きょうしんしょう;)、心筋梗塞(しんきんこうそく;)をふくむ冠状動脈性心疾患(かんじょうどうみゃくせいしんしっかん;心臓の心筋に十分な血液が供給されないために起こる病気)のリスクが6年以上の勤務を続けると50%以上になるといったショッキングな数字を報告する研究もあるほどです。

だって仕事変えられないじゃん…



で結局、どうすればいいの?
🔹概日リズムの乱れがさまざまな疾患の大きな要因になっているとするならば、リズムを整えることが大事といえます。そのポイントになるのはやはり「ひかり」のようです。
🔹視床下部の視交叉上(しこうさじょうかく;睡眠、血圧、体温など生体リズムの中心的役割を果たしている)が概日リズムをつかさどる親時計の役割を果たすといわれます。他に胃や腸などからだの様々な部位の細胞にも「時」を刻み、他の部位と「同期(どうき;複数の部分でタイミングを合わせる)」してリズムを作りだす子時計がある…という説が主流になっています(ある時間になるとある種のはたらきをしたり、またおさえたりしてからだの恒常性維持(こうじょうせいいじ)に努める細胞がさまざまな臓器で見つかっています)。

🔹親時計である視交叉上核はおもに「ひかり」の刺激によって制御されているので、まずはひかりをコントロールするのが、概日リズムを調節するために重要です。
そこで夜勤明けなどの後、
日中しっかりと起きていたい時、
日中はしっかりと寝たい時、

外の明るさ、青白く感じるような、まぶしい光を見るようにし、明るい光の中で過ごすようにしましょう。カーテンを開けた窓辺で作業するのも効果的のようです。

ブルーライトカットメガネなどをつかって過ごし、
寝るときは
できれば完全に光をシャットアウトする
アイマスク
遮光(しゃこう)カーテン
を使いましょう。


🔹夜シフト前の睡眠は、通常夜間にとる睡眠時間よりも時間が短くなる傾向があり、それが夜シフト時の眠気を増加させているとも言われています。
夜シフト前の睡眠時、しっかり光コントロールを忘れず!
🔹夜のシフトワーク中に仮眠をとることで、仕事中の注意力を維持できたりまた疲労感を軽減できると報告もあります。しかしもちろん仮眠を取れない場合もあるでしょうから、ご参考までに。
🔹運動することは睡眠状態の改善につながるため、運動することで昼夜シフトそれぞれをよりよく調整できるのはないかともいわれています。
🔹今のところ残念ながらシフトワーカー さんの概日リズムを調整するのための「切り札」のようなものは研究の世界ではない…ようです。何か新たな方法など、紹介できるものが出てきたらご紹介しようと思います。
🔹シフトワーカーの方には、
・夜勤明けに良く眠れない
・変な時間に目がさえる
・いつも疲労感を感じる、疲れがとれない
といったからだに関するストレスが多い上に
・家族と生活時間、休日が合わない。
・通常生活時間で働いている友人などと連絡が取りにくい、会いにくい。
・買い物等をする時間と場所がない。
といったまわりの人や状況とのギャップもストレスにプラスされます。
🔹ゆえに肉体的にも精神的にも普通シフトの人よりもさらに厳しい状態になることもしばしばだと考えられます。



もう慣れたし、あきらめてるけど周りの人と生活時間が合わない…

🔹からだもこころも良い状態を保つために 、そのケアが人一倍重要になってくるシフトワーカーさんたち。周囲の方の理解や温かい思いやりがとっても大切です。
🔹シフトワーカーさんたち同士でお悩みが共有できることも大切。「あるある」とか「すごくわかる〜」と共感できる場を持つことや探してみるのも大事です。同業の友人・知人と情報交換したり、ソーシャルネットワーク(SNS)でハッシュタグ(#)をつけて検索してみると、色々な方のつぶやきや夜勤時の過ごし方など参考になる何かが見つかる場合も…⁉︎ (*SNSの利用はご自身の判断で。)

健康・栄養科学シリーズ 生化学 石堂一巳、福渡努、南江堂
Shift work, and particularly permanent night shifts, promote dyslipidaemia: A systematic review and meta-analysis
Frédéric Dutheil, Julien S Baker, Martial Mermillod, Mélanie De Cesare, Alexia Vidal, Fares Moustafa, Bruno Pereira, Valentin Navel Atherosclerosis. 2020 Nov;313:156-169.
Postprandial metabolic profiles following meals and snacks eaten during simulated night and day shift work
Al-Naimi S, Hampton SM, Richard P, Tzung C, Morgan LM
Chronobiol 2004 Int 21:937–947
Circadian aspects of postprandial metabolism. Morgan L, Hampton S, Gibbs M, Arendt J Chronobiol 2003 Int 20:795–808
Shift work, occupation and coronary heart disease over 6 years of follow-up in the Helsinki Heart Study
L Tenkanen , T Sjöblom, R Kalimo, T Alikoski, M Härmä Scand J Work Environ Health
actions. 1997 Aug;23(4):257-65
Shift work and cardiovascular disease--from etiologic studies to prevention through scheduling
M Härmä Scand J Work Environ Health actions. 2001 Apr;27(2):85-6
Shiftwork and myocardial infarction: a case-control study. Knutsson A, Hallquist J, Reuterwall C, Theorell T, Akerstedt T Occup Environ Med 1999 56(1):46–50
Association Between Night-Shift Work and Cancer Risk: Updated Systematic Review and Meta-Analysis
Aishe Dun, Xuan Zhao, Xu Jin, Tao Wei, Xiang Gao, Youxin Wang, Haifeng Hou
Front Oncol. 2020; 10: 1006.
Shift Work and Prostate Cancer: An Updated Systematic Review and Meta-Analysis
Mario Rivera-Izquierdo, Virginia Martínez-Ruiz, Elena Mercedes Castillo-Ruiz, Miriam Manzaneda-Navío, Beatriz Pérez-Gómez, José Juan Jiménez-Moleón
Int J Environ Res Public Health. 2020 Feb; 17(4): 1345.
Does night-shift work increase the risk of prostate cancer? a systematic review and meta-analysis
Dapang Rao, Haifeng Yu, Yu Bai, Xiangyi Zheng, Liping Xie
Onco Targets Ther. 2015; 8: 2817–2826.
Effects of the Internal Circadian System and Circadian Misalignment on Glucose Tolerance in Chronic Shift Workers
Christopher J Morris, Taylor E Purvis, Joseph Mistretta, Frank A J L Scheer J Clin Endocrinol Metab. 2016 Mar;101(3):1066-74.